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掲載日:2018/12/20

あなたは何種類の薬を飲んでいますか

~多剤薬物投与を考える~

 高齢者の医療では、複数の疾患を抱えているため多種類の薬が必要となって、多くの薬が投与されます。この多剤投与には多くの問題が含まれており、これを「多剤投与、ポリファーマシー(polypharmacy)」というキーワードで表現しています。
 一人の患者さんで、内科では高血圧とコレステロールの治療、整形外科で骨粗鬆症と腰痛の治療、眼科で白内障の治療、男性では泌尿器科で前立腺の治療などで多種類の投薬を受け、ご自身でサプリメントや保健薬を購入して服用されていることはしばしば見受けられます。このような多剤投与、多剤服用には、同効の薬の重複や飲み合わせるべきでない薬が混在しており、すでに服用する必要のない薬も含まれています。誰が管理したらよいのでしょう。一番良い方法は、かかりつけ医に「お薬手帳」を示して相談することです。服用している薬をすべてかかりつけ医に見せていただきたい。

◆高齢者の特徴
 高齢者では年齢が増えるほど入院・入院外の医療が必要となって、多くの薬が投与され医療費が上昇してきています。年齢が上がるほど病気の併存が多くなり、75歳以上の後期高齢者の半数の人は3種類以上の疾患をもっています。
 高齢者の特徴は、①急性疾患以外にも病気が併存する。②症状や経過が非定型的なことが多い。③症状や治療に対する反応に個人差が大きい。④せん妄・不穏などの精神・神経症状が出現しやすい。⑤恒常性を維持する機構の破綻が出現しやすく、電解質、凝固系、内分泌系の異常などが起こりやすい。⑥薬物の副作用が出現しやすい。⑦急性疾患に引き続いて次々と合併症が発生する。⑧慢性化しやすい。⑨患者さんが置かれている社会的状況によって予後が左右されやすいこと。などが挙げられます。

◆認知症と生活習慣病
 多疾患が併存するのには多くの原因があります。たとえば、糖尿病と認知症の関係を例に取ってみると、両疾患とも年齢とともに増加しますが、最近分かったことは糖尿病が認知症の発症リスクになっていることです。
 認知症の患者さんの調査をすると、7割近い方が生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)を合併していました。逆に言うと、認知症で生活習慣病のない方は3割しかいません。 高齢者では、一人の患者さんが主要な疾患に他の疾患を合併しているというよりも、複数の疾患が併存していると言うことができます。

◆なぜ多剤併用となるのか
 アメリカの統計報告では、65歳以上の40%の人には5~9剤の処方、18%の人には10剤以上の処方がなされています。多剤併用となる理由は、①併存疾患が多い。②多くの不定愁訴に対して、それぞれの薬が処方される。③一過性の症状に対する処方薬が不要になっても中止がされずに継続されている。④ある薬剤投与によって、その副作用で症状が出ているのに気が付かず、それを新たな症候と誤認して更に薬が処方され、またその薬で不具合が生じて、新たな処方が追加されるというように、「処方カスケード」と表現される投薬が繰り返される。たとえば、高血圧で処方されたカルシウム拮抗薬で副作用の便秘や浮腫みが生じたときに、副作用と知らずに便秘薬や利尿薬が処方される。⑤近年ガイドラインが整備され、その影響による処方薬の増加などもある。

◆多剤併用による副作用
 単独の薬剤ならば起こらないような副作用が、多剤投与で起こりやすくなります。ある報告によれば、処方薬が5剤以上での多剤投与では、その副作用リスクは3倍になり、転倒リスクは1剤増えると1.6倍転びやすくなります。薬の数が3剤以上になると、飲み忘れなどの服薬不良(アドヒアランス)は2倍以上起こりやすくなることも指摘されています。
 また、高齢者の場合は副作用が重篤化しやすく、入院リスクは非高齢者の7倍との報告があり、副作用による救急受診の原因となった薬剤の65.7%は、4つのクラスの薬剤(ワーファリン、インスリン、抗血小板薬、経口血糖降下薬)と関連していたと言われています。

◆多剤併用の問題点
 薬が多いほど、飲み間違い、処方・調剤の過誤は増加し、薬剤間の相互作用が起こりやすくなります。このため副作用による有害作用が増加して、医療費も増える一方、多剤の服薬で生活の質QOLが低下して、介護者の服薬管理の負担が増します。
 高齢者で薬物有害作用が増加する要因は、「疾患上の要因」の他に、高齢者では「機能上の要因」があって、臓器予備能の低下で薬物動態が変化して、場合によっては過量投与になるために副作用が出る可能性があります。また、高齢者の多くが認知機能・視力・聴力の低下があって、アドヒアランス(服薬のコンプライアンス)が低下し、誤服用による副作用が起こる可能性があります。

◆アドヒアランス
 アドヒアランスが悪くなることが多剤投与の一つの問題点であります。アドヒアランス調査をすると、医師の指示通りに服薬しているのは4割弱で、6割以上の患者さんは指示通りに服用できていません。週に7回以上の飲み忘れが2割の高齢者にあって、毎日1回は服用を忘れている計算になります。アドヒアランス低下の要因は、①用法、薬効の理解不足。②認知機能。③薬剤容器の開封能力。④処方薬剤数。⑤処方の変更。が関係しています。
 したがって、アドヒアランスを向上させるには、①できるだけ服薬数を少なくする。②服薬法を簡便化する。③介護者が管理しやすい服用法を考慮する、たとえば家族が在宅中の時間帯に服用を変える。④剤形も口腔内崩壊錠や貼付剤を選択する。⑤一包化調剤の指示。⑥服薬カレンダーや薬ケースの利用など。が提案されています。
 多剤投与を解決する方法は、もっとお薬手帳を活用すること。そして、何のためにその薬を服用しているのか、また、その薬が必要なのかをかかりつけ医に相談されることをお勧めします。飲み残している薬は、必ず処方医に報告して無駄をなくしましょう。

[出典]

愛知県内科医会 安藤忠夫

[監修]公益社団法人 愛知県医師会

多剤服用には、同効の薬の重複や飲み合わせるべきでない薬が混在しています。

おくすり手帳を活用し、必要な薬だけを服用しましょう。

[このページの内容に関する留意点]

ご紹介している健康情報は2018年12月時点のものです。

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