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掲載日:2019/05/30

山中教授が語る「iPS細胞研究の現状と医療応用への取り組み」

第30回日本医学会総会の最後を飾った、山中教授の講演会をレポート。

日本医学会総会は、日本医学会が日本医師会と協力して4年に一度開催する、国内最大級の学会です。第30回となる今回は、3月から4月にかけて名古屋市内のさまざまな場所で、集会や展示会などが開かれました。ここでは、学会最終日の4月29日に名古屋国際会議場で開催された、「iPS細胞」の開発者である山中伸弥教授の閉会講演をレポートします。

講演のテーマは「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」。2014年9月、放置すると失明にも至る重い目の病気「加齢黄斑変性」の患者に、患者自身のiPS細胞から作った網膜の細胞を移植する世界初の手術が実施されました。術後の経過も良好で、結果は成功。しかし、2つの大きな課題が残りました。ひとつはiPS細胞の準備に1年近くかかった時間。もうひとつは数千万円近くかかった費用です。

この2つの課題の解決策が「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」です。免疫拒絶反応が起きにくい組み合わせの遺伝子を持つ健康な方(数百人に一人の確率)に細胞を提供してもらい、医療用のiPS細胞を作製。あらかじめ安全性を確認したiPS細胞を備蓄し、迅速な提供を可能にします。 患者自身の細胞を使う「自家移植」と比べると、時間も費用も格段に抑えられます。

2019年4月現在、4種類のiPS細胞を提供しており、日本人の約40%をカバーできると考えられています。 ただ、日本人の90%以上に供給するには約150種類、全世界となるとさらに多くの種類のiPS細胞が必要です。

そこで注目されているのが、遺伝子を書き換える「ゲノム編集技術」を用いて、拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞を作製することです。試算では12種類のiPS細胞で、世界的なカバー率の向上が可能になると考えられています。

また、iPS細胞は創薬の分野でも大きな期待を集めています。iPS細胞で病気を再現すれば、既存薬などの効果を速く大量に調べることができ、新薬の候補も効率よく探せます。この手法により、2018年12月に慶応大学で、2019年3月には京都大学でも、全身の筋肉が衰えていく難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の臨床試験が始まりました。

最後に山中教授はiPS細胞の現状を「まだ良くて七合目。これからが正念場」と語って、スピーチを終えました。講演には多くの人々が詰めかけ、会場に入り切らない人のために、大きなスクリーンで講演の模様を映す中継会場まで設けられる盛況ぶり。山中教授とiPS細胞に、たくさんの人々が夢と希望を託していることも、あらためて実感した講演会でした。

[監修]公益社団法人 愛知県医師会

名古屋国際会議場で山中伸弥教授の講演が行われました。

大勢の聴講者が詰めかけ中継会場が設けられる盛況ぶり。

[このページの内容に関する留意点]

ご紹介している健康情報は2019年5月時点のものです。

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